日本腹部救急医学会雑誌
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会長講演
腹部救急疾患としての門脈圧亢進症
─とくに食道胃静脈瘤治療について─
田尻 孝
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2009 年 29 巻 1 号 p. 21-25

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抄録

本稿では腹部救急疾患としての門脈圧亢進症,とくに食道胃静脈瘤に対する治療法の工夫と変遷について述べた。現在教室での緊急出血例に対する標準的治療法は,食道静脈瘤は出血点の内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL),胃静脈瘤は出血点近傍にヒストアクリルを穿刺注入(EIS)した後,出血点と穿刺部を含めてEVLを施行し抜針している。待期・予防例は,まず全身状態や門脈血行動態を検索し,食道静脈瘤に対してはRed color sign陽性や形態がF2以上になれば積極的に内視鏡的治療を行う。内視鏡的治療難治例に対しては塞栓術の追加施行や手術療法で対処する。胃静脈瘤に対しては出血率が低く,しかもビラン,潰瘍が出血の主な原因であるので,予防例に対しては飲酒や消炎鎮痛剤の制限と,抗潰瘍剤の投与で経過観察している。また待期例に対しては内視鏡的治療と塞栓術を単独または併施し完全消失させている。

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© 2009 日本腹部救急医学会
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