2009 年 29 巻 1 号 p. 35-38
本稿では自験例の検討を交えて小児急性腹症診察のポイントをまとめた。当科で入院した小児腹部救急疾患症例の内訳では,急性虫垂炎が全体の半数を占め,さらに腸重積症,イレウス,胆道拡張症の4疾患で全体の95%以上を占めた。小児の急性腹症ではこれらの頻度の高い疾患が多様な症状,経過を呈していることが多く,これらの疾患は必ず念頭に置かなければならないものと考えられた。一方で外科の立場からは,急性腹症のprimary surveyとして,原因疾患の鑑別診断よりも,手術を要する緊急性の高い腹痛を見分ける病態診断が最優先されるべきであると考える。このため小児の急性腹症においては,初療段階より小児救急医,小児内科医,小児外科医の緊密な連携が必須であり,こうした連携を勘案した地域の小児救急医療体制を整備してゆく必要があるものと思われる。