日本腹部救急医学会雑誌
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特集:小児腹部救急診療のコツ
虫垂炎の自然経過に関する一考察
─超音波検査で虫垂炎と診断された非手術症例の検討─
上野 滋平川 均松田 博光
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2009 年 29 巻 1 号 p. 47-52

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抄録
虫垂炎の診断はときに困難である。われわれは小児虫垂炎を疑われた345例に対し,(1)診断され次第虫垂切除術を行う,(2)抗菌薬を使わず,症候と腹部所見の推移と超音波検査(US)所見を重視して総合的に診断する,との方針で一貫して診療を続けた。その結果,病理組織学的にカタル性虫垂炎以下の虫垂切除negative appendectomy例は全体で212例中19例(9.0%),USを行った例では112例中5例(4.5%)であった。また,USで虫垂炎とされた161例中49例(30%),USで蜂巣炎性以上の虫垂炎とされた125例中21例(17%)は手術せず軽快した。信頼できるUSにより組織学的変化を画像化することで虫垂炎の正診率を向上させるが,虫垂炎が自然軽快する可能性もあることを念頭に,画像所見のみに頼らず,症候の経過観察と注意深い診察を繰り返すことで,不要な手術を減らすことができる。
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© 2009 日本腹部救急医学会
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