2009 年 29 巻 1 号 p. 83-85
症例は91歳の男性。半月間ほど左下腹部痛を認めていた。増悪したため,その翌日,近医を受診し,腹腔内膿瘍が疑われ当院を紹介された。来院時,左下腹部に限局した圧痛を認めたが,反跳痛,筋性防御はみられなかった。腹部CTで左下腹部正中近傍に脂肪織濃度の上昇がみられ,内部に弓状の高吸収域を認めたため,魚骨による腹腔内膿瘍と診断し,同日緊急手術を施行した。手術所見は,左下腹部傍正中切開にて開腹。創直下に大網を巻き込み約10cm大の腫瘤を形成しており,小腸の一部と一塊になっていた。剥離困難であり,病変部腸管を含めて腫瘤を形成している大網を切除し,切離腸管は機能的端々吻合で吻合した。腫瘤内部には灰白色の膿汁を認め,約2.5cm長の魚骨を認めたが,穿孔部位は不明であった。術後経過は良好で第11日目に退院した。今回,われわれは消化管穿孔部位がみられなかった魚骨による腹腔内膿瘍の1例を経験したので報告する。