2009 年 29 巻 3 号 p. 529-532
症例は36歳男性。自動車事故による多発外傷にて救急搬送された。腹部造影CTではIIIb型の肝損傷を認め,後区域から造影剤の漏出を認めた。保存的加療を行っていたが胆汁性腹膜炎を併発し,経皮的ドレナージやENBDを行ったが症状は改善しなかった。当初,後区域枝のみの胆道損傷と考えていたがMRCPにて左肝管の損傷も認め,開腹の上洗浄ドレナージを行った。鈍的外傷に伴う胆管損傷はまれであり診断および治療法の選択に難渋したが,診断には腹腔穿刺とMRCPが有用であった。また,ドレナージのみで内視鏡的処置や追加手術を行わずとも合併症なく退院可能だった。