抄録
症例は83歳女性。1996年直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術を施行された。2003年8月腹痛を主訴に救急外来受診した。腹部所見は腹膜刺激症状に加え,ストーマ周囲の皮膚が発赤し,同部の著明な圧痛を認めた。腹部造影CT検査でS状結腸ストーマ脚の壁の断裂とストーマ周囲の腹壁内にガス像を認めた。S状結腸ストーマの腹壁内穿通とそれに伴う敗血症と考え,緊急開腹術を施行した。ストーマ周囲の皮膚を切開すると,腹壁内のS状結腸は黒緑色に変化していた。腸管の一部は穿孔し,腹壁への便貯留・膿瘍形成を認めた。ストーマを腹壁と合併切除し,人工肛門再造設術を施行した。手術および病理学的所見より宿便性大腸穿孔と診断した。術後経過は良好で,術後26日目に軽快退院となった。本症例では穿孔部ならびに膿瘍形成が腹壁内に留まっていたこと,かつ病変部を一括して切除し得たことが致命的な状態に至らなかった要因と考えられた。