2009 年 29 巻 7 号 p. 1017-1020
症例は63歳の男性。突然の腹痛が出現し,近医を受診した。CTにて上腸間膜動脈(以下,SMA)閉塞症を疑われ,当院に搬送された。全身状態は良好,下腹部で優位の圧痛を認めた。血液検査所見では乳酸値が31.3mg/dLと上昇していた。前医でのCTではSMAは開存し,回腸動脈の狭小化,回腸の一部に造影不良部位を認めNOMI と診断した。血管造影検査を施行し,CTと同様の所見を得た。続いて塩酸パパベリンの動脈内投与を行ったところ,動脈狭小化の改善は認められなかったが,腹痛が著明に改善した。直後にCTを施行し,回腸の造影効果の改善が認められ,乳酸値も正常化した。症状の著明な改善と画像所見における血流の改善,乳酸値の改善を認めたため,腸管壊死はないと考え,塩酸パパベリンの持続動注を行った。2日後の血管造影検査では,回腸動脈の狭小化の改善,回腸の血流改善が認められた。その後の経過は良好で第13病日に軽快退院した。