日本腹部救急医学会雑誌
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会長講演
第45回日本腹部救急医学会総会会長講演:潰瘍性大腸炎
亀岡 信悟
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2009 年 29 巻 7 号 p. 945-950

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抄録

潰瘍性大腸炎の変遷:(1)疫学,(2)多様化した内科治療,(3)外科治療の進歩,(4)チーム医療の推進等について講演した。潰瘍性大腸炎は本邦ではまれな疾患だったが,近年急増し,2007年には9万人を超え,昨年は10万人を突破した。内科治療についてみると,5─ASA, SASP,PLS が主であったが,近年血球成分除去療法,あるいは免疫調整剤により内科治療成績が著明に向上した。外科サイドからすると,まずは内科治療を積極的に行い,無効な場合は外科治療の適応にすることになり,外科治療と内科治療の棲み分けが明確化され,解り易くなったということもできる。回腸肛門(管)吻合術の歴史は約30年になる。当初緊急例に対しては3期に分割手術が主流であった。しかしその後,残存した直腸からの大量出血などの重症合併症の回避,手術時間の短縮など技術の向上から,緊急例に対しても1期,2期手術が採用されるようになった。術式としては,若年者に多い潰瘍性大腸炎に対し私どもの施設では待機例に対しHALSを用いた腹腔鏡下手術を開発したが,緊急例までには適応拡大していない。患者さんを中心軸に据え,内科・外科,さらにはナースなどコメディカルと密な連携を図ったチーム医療が推進されていることも,最近のトレンドである。これら教室における自験例を中心に,本邦,諸外国における潰瘍性大腸炎の治療の最近の動向について講演した。

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© 2009 日本腹部救急医学会
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