日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
乳縻腹水を伴った絞扼性イレウスの1例
梅邑 晃肥田 圭介木村 祐輔高橋 正統若林 剛
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2010 年 30 巻 6 号 p. 847-850

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抄録

症例は53歳,男性。18年前に胃癌で胃全摘術の既往があり,突然の腹痛で来院した。腹部CT検査で腹水の貯留とwhirl signを認め,絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行した。開腹すると乳縻腹水が大量に貯留しており,腸間膜内にも白色調の液体貯留を認めた。小腸間膜が前回再建時の空腸挙上脚を軸として捻転していたが,絞扼解除で腸管血流は改善したため,腸切除は施行しなかった。腹水中トリグリセリド値が246mg/dLと高値で,SudanIII染色陽性であったため乳縻腹水と判断した。術後経過は順調で,第10病日に退院となった。乳縻腹水を呈する絞扼性イレウスの報告はまれで,本症例を含めて6例の文献報告を認めるのみである。全例が小腸軸捻転で発症していたが,リンパ系は,血管系に比較して低圧であるため,血流が完全に遮断されない絞扼でもリンパ流が遮断され乳縻腹水を呈する絞扼性イレウスが発症する可能性が示唆された。

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© 2010 日本腹部救急医学会
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