日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
鼠径ヘルニア嵌頓による大腸穿孔の1例
石田 諒陵城 成浩植田 真三久村田 晃一富原 英生家永 徹也
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2010 年 30 巻 7 号 p. 931-935

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抄録

症例は72歳男性。肺癌,脳転移に対して放射線療法,化学療法中に,熱発と間歇性の腹痛が出現した。右下腹部に皮下気腫を認め,陰嚢は新生児頭大に腫大し,圧痛が著明であった。採血にて著明な炎症所見を認め,腹部CTでfree air,陰嚢内への腸管の脱出を認め,鼠径ヘルニア嵌頓・消化管穿孔の診断で緊急手術となった。盲腸から上行結腸が鼠径管に嵌頓し,ヘルニア嚢内で上行結腸が穿孔し,便汁が陰嚢内から腹腔内へと流出していた。嵌頓腸管を切除し,回腸瘻を造設した。ヘルニア嚢の内面に壊死物質が強固に癒着し,剥離困難であったため精巣ごと摘出した。術後51日目に呼吸器内科へ転科となった。盲腸・回盲部の鼠径ヘルニア嵌頓は,本邦での報告は9例と非常に少なく,さらに,鼠径ヘルニア嵌頓に伴った大腸穿孔に関しては8例(うち盲腸穿孔4例)であった。鼠径ヘルニア嵌頓の内容が回盲部の場合,他の腸管の鼠径ヘルニア嵌頓症例に比べ穿孔頻度が高く,ヘルニア内容が回盲部である場合には特に注意が必要であると思われる。

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© 2010 日本腹部救急医学会
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