抄録
上部穿孔性腹膜炎症例における腹膜CT値測定の臨床的意義について検討した。上部消化管穿孔27例を対象とし,単純CT上での肝前面の腹膜CT値(HU)を測定し,腹膜炎の重症度や穿孔部位との関連を検討した。2名により判定した腹膜CTの測定値は正の相関を認めた(ρ=0.87,p<0.0001)。腹膜CT値は,Acute physiology and chronic health evaluation II(APACHE II)スコア,sequential organ failure assessment(SOFA)スコア,Mannheim Peritonitis Index(MPI)と有意な負の相関を示したが,入院時systemic inflammatory response syndrome(SIRS)の有無では差はみられなかった。また腹膜CT値は術後のICU入室日数と負の相関を示し,臓器障害が3臓器以上に及んだ症例の腹膜CT値は,臓器障害なし,臓器障害が1つの症例と比較して有意に低値であった。上部消化管穿孔症例の腹膜CT値測定は,客観的で,腹膜炎の重症度をよく反映し,腹膜炎の重症度の予測に有用であると考えられた。