2010 年 31 巻 1 号 p. 99-102
症例は83歳女性,既往に肺塞栓症があり,ワルファリンカリウムの内服を続けていた。今回,腹痛,嘔吐を主訴に来院した。炎症反応と凝固能異常を認め,腹部造影CTでは空腸起始部に強い拡張,浮腫があり,血性腹水を伴っていた。急性腹症,急性腸管壊死の疑いで緊急手術を行った。原因は腸間膜血腫による空腸の局所的なうっ血であった。明らかな虚血性変化がないため腸管切除は行わなかった。術後は良好に経過し退院した。非外傷性の腸間膜血腫は術前診断に苦慮することが多いが,抗凝固療法を受けている患者には同疾患を考慮に入れる必要があると考えられた。