日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
原著
腹部緊急手術のリスク評価におけるPOSSUMおよびP-POSSUM scoreの有用性の検討
森川 充洋小練 研司永野 秀樹村上 真廣野 靖夫五井 孝憲飯田 敦片山 寛次山口 明夫
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 31 巻 4 号 p. 599-604

詳細
抄録

【目的】当科の腹部緊急手術症例を対象にPOSSUMおよびP-POSSUM scoreを算出し,術前の患者状態と手術侵襲の定量化,同scoreの有用性を検討した。【対象】2006年11月より2009年10月に腹部緊急手術を施行した110例を対象とした。軽症例の多い虫垂炎,鼠径・大腿ヘルニア嵌頓症例は除外した。【方法】診療録より術前状態(PS),手術侵襲(OS)のscoringに必要な項目を調査し,予測合併症率,予測死亡率を算出した。【結果】PS 30点以上例の術後合併症率は82%であり,それ以下では23%と低率であった。死亡例は,全例PS 35点以上の症例であった。予測合併症率が71~80%/81~90%/91~100%の高risk群の合併症発症率は45/60/72%と高値を示した。死亡例は全てPOSSUMにおける予測死亡率が70%以上の症例であり,71~80%/81~90%/91~100%の高risk群の実死亡率は20/33/83%であった。P-POSSUMでは予測死亡率が61~70%/71~80%/81~90%/91~100%の実死亡率は50/33/40/80%であった。【考察】POSSUMおよびP-POSSUMはともに死亡率を過大に評価していたが,高risk群では比較的よく術後合併症率,死亡率を反映していた。低risk群に対してP-POSSUMの予測値が比較的実際の値に近いと考えられたが,過大評価となり注意が必要と考えられた。

著者関連情報
© 2011 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top