抄録
外傷性膵損傷は,急性期では血液検査や腹部所見だけでは困難を要し,治療方針を決定するには,損傷部を診断するだけでなく,いかに膵管損傷の有無を確認できるかが鍵である。当センターにおける膵損傷の診断は,搬入時の腹部CTだけでなく,単独損傷であるなら積極的にERPを施行,腹部他臓器損傷の合併例は開腹術を行い,膵管損傷の有無を検索する。治療は,III型膵体・尾部損傷の場合,膵尾側切除術を基本としつつ,Bracy法なども考慮する。III型膵頭部損傷の場合,膵頭十二指腸切除術が主であるが,状況によってドレナージ術を施行する。ただし,膵損傷例の治療方針を決定するにあたり,他部位合併損傷が多いため,搬入後の循環動態を考慮しつつ,治療の優先順位を早期に決定し,いかに合併症である縫合不全や膵液瘻を最小限に抑えるかが鍵である。