日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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ISSN-L : 1340-2242
特集:主膵管損傷例に対する最近の診断・治療法
外傷性膵損傷に対する主膵管再建膵縫合術
清水 正幸松本 松圭船曵 知弘山崎 元靖江川 智久長島 敦北野 光秀
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2011 年 31 巻 6 号 p. 895-900

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抄録
外傷性膵損傷は比較的まれな腹部外傷である。その死亡率は受傷機転が鈍的外傷または刺創の場合で15%程度である。来院時ショック例,合併損傷臓器数が多い例,診断や治療が遅れた例は死亡率が高くなる。これらのリスクがなく,挫滅範囲が比較的限局されている頚部から体部膵損傷は,主膵管再建膵縫合術の良い適応である。本術式は膵管膵管吻合かつ膵実質縫合であるが,膵管ステントの留置は,膵管狭窄の予防,膵管内圧の減圧の点から必要である。本術式の術後膵関連合併症は膵液漏が26%,膵炎が13%,仮性膵嚢胞が8.7%,腹腔内膿瘍が4.3%であった。また,自験例における平均手術時間は200分であった。本術式は尾側膵切除術と比較して,術後膵関連合併症は腹腔内膿瘍以外でやや高率であり,手術手技に時間を要するが,膵脾機能を温存できる点,解剖生理学的に単純な再建である点において優れている。
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© 2011 日本腹部救急医学会
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