日本交通科学学会誌
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健常ドライバーの道徳的感情が運転行動に与える影響
川端 香小林 康孝藤田 和樹渡辺 容子
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2022 年 22 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

自動車運転時、ドライバーの道徳的感情が運転行動に影響を与える。道徳的感情とは、「罪悪感」や「羞恥心」に代表される感情のことを指し、社会的規範を遵守するうえで重要な役割を果たす。本研究の目的は、ドライバーの道徳的感情と運転行動の関連について検討することである。健常ドライバー28名を対象とし、道徳的感情に関するアンケート調査と運転行動評価を実施した。道徳的感情に関するアンケートには50項目からなる犯罪のシナリオを用い、対象者はシナリオを読み、罪の大きさを評価した。次に、ドライビングシミュレーターを用いて運転行動評価を実施した。評価項目は、①急ブレーキの回数、②ヒヤリハットの回数、③事故の回数、④速度超過時の平均速度、⑤速度超過割合とした。アンケート結果より、対象者を低モラル群、過剰モラル群、対照群の3群に分類し、3群間の運転行動評価項目について統計学的に比較検討した。その結果、急ブレーキの回数、ヒヤリハットの回数、事故の回数、速度超過時の平均速度について、3群間に有意差は認められなかった。過剰モラル群は、低モラル群より有意に速度超過割合が高かった。道徳的感情が過剰傾向にあるドライバーは、違反や事故につながる運転行動を起こしやすいパーソナリティ要因をもっている可能性が考えられる。ただし、低モラル群、過剰モラル群ともに、対照群と有意差を認めなかったことから、道徳的感情の程度が運転行動に与える影響についてさらなる検証が必要である。

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