2011 年 31 巻 7 号 p. 1067-1070
症例は54歳,女性。帝王切開と虫垂炎手術の既往がある。以前より時々左下腹部痛を自覚していたが,内服薬にて症状は軽快していた。今回,突然の腹痛を認め当院救急外来受診した。腹部CT検査にて小腸イレウスと診断され,イレウス管を挿入されるも症状軽快せず,4日目に当科へ紹介された。その際施行した腹部造影CT検査にて,子宮の腹側への偏位と,左子宮広間膜部を前方から後方へ陥入する小腸ループを認め,左子宮広間膜ヘルニアと診断され,緊急手術となった。開腹すると,左子宮広間膜に径2cm大の裂孔があり,回腸末端から約60cm口側の回腸が腹側から背側に向かって陥入し絞扼されていた。嵌頓小腸は鬱血していたが腸管壊死は認めず,嵌頓小腸を還納し,裂孔を縫合閉鎖して手術を終了した。術後経過は良好で第9病日に退院した。術前に本症の診断が得られた症例の報告はまれであり,CT所見の特徴も含めて報告する。