日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
対照的な手術所見を呈した高度門脈ガス血症の2例
坂井 寛成田 知宏阿部 薫夫大里 雅之長谷川 達郎水野 豊岡本 道孝澤 直哉
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2011 年 31 巻 7 号 p. 1083-1086

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抄録

症例1は84歳の女性で,上腹部痛と嘔気を主訴に救急搬送された。腹部造影CT検査では,高度な門脈ガス血症とイレウス像を認めた。代謝性アシドーシスの進行を認めたため,緊急手術を施行した。回腸から右側結腸まで非連続性の虚血性変化を認め,同部を広範囲切除した。腸間膜動脈の閉塞性所見は認めず,非閉塞性腸間膜虚血症が疑われた。術後,第39病日目に退院となった。症例2は79歳の女性で,上腹部痛と嘔気で近医を受診した。開腹歴があるため術後イレウスが疑われ,当院へ紹介となった。腹部造影CT検査で,高度の門脈ガス血症と小腸の壁内ガス像を認めた。強い腹痛と代謝性アシドーシスのため腸管壊死を疑い,緊急手術を施行した。開腹所見では,術後の癒着を認めたが腸管の虚血性変化は認めず,癒着剥離術を施行し,第28病日目に退院となった。本2例は高度な門脈ガス血症を認め臨床所見が類似していたが,腸管壊死の有無が対照的な症例であったので報告する。

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© 2011 日本腹部救急医学会
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