2011 年 31 巻 7 号 p. 1093-1096
閉鎖孔ヘルニアの治療は緊急開腹手術が選択されることが多いが,他のヘルニア嵌頓と同様に非観血的整復後に待機的に低侵襲手術を施行する報告が散見されるようになった。今回2度の非観血的用手整復後に待機手術を施行した閉鎖孔ヘルニアの1例を経験したので報告する。症例は106歳の女性。4ヵ月前に閉鎖孔ヘルニアに対して非観血的用手整復を施行したが,再度ヘルニア嵌頓を発症した。発症後4時間しか経過しておらず,CTで腸管壊死の可能性は低いと判断し,非観血的用手整復を施行し,後日待機的に手術を施行した。非観血的用手整復により合併症を多く有する高齢者の緊急手術を回避できる可能性はあるが,嵌頓腸管を視認できず遅発性小腸穿孔をきたす危険性がある。非観血的用手整復の適応を閉鎖孔ヘルニア発症からの経過時間で決定することは困難で,CT所見などを参考にして適応を慎重に判断しなければならない。