日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
鼠径ヘルニア術後に絞扼性イレウスを発症した1例
岡澤 裕永易 希一小野 誠吾杉本 起一柳沼 行宏小島 豊五藤 倫敏田中 真伸仙石 博信冨木 裕一坂本 一博
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2011 年 31 巻 7 号 p. 1097-1099

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抄録

症例は62歳の男性。2009年8月両側鼠径ヘルニアの診断で,Tention free法による鼠径ヘルニア根治術を施行した。既往歴は気管支喘息のみで開腹歴なし。術後第1病日より腹痛,嘔吐を認め,イレウスの診断でイレウス管を挿入した。しかし,症状の改善は認められず,腹膜刺激症状も出現したため同日に緊急手術を施行した。開腹所見では,多量の血性腹水と壊死した腸管を認めた。さらにS状結腸の結腸垂が右内鼠径輪近傍の腹膜に癒着して索状物を形成しており,空腸が嵌入し絞扼していた。絞扼していた小腸の部分切除術を施行した。またヘルニア修復部の腹膜には損傷がないことを確認し手術を終了した。鼠径ヘルニア根治術(Tension-free法)後の腸閉塞発症例はまれである。自験例では,索状物が鼠径ヘルニア修復部に存在しており,ヘルニア嚢を整復したことにより腸管が入り込むスペースができたため,腸閉塞が発生したと考えられた。

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