2011 年 31 巻 7 号 p. 987-992
内ヘルニアは小腸閉塞を引き起こすまれな疾患であるが,術前診断は容易でなく,開腹した際に診断に至ることが多い。当科でイレウスの診断で開腹した172例のうち,内ヘルニアは7例であった。男女比は2:5であり,年齢は15~86歳であった。4例には診断後24時間以内に緊急手術を行い,3例はイレウス管による腸管減圧後に開腹術を受けた。内ヘルニアと診断できた3例のうち,2例はMDCTを用いたMPR画像で子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断した。開腹術により大網裂孔ヘルニア,盲腸窩ヘルニア,S状結腸間膜ヘルニアをおのおの1例に,4例に子宮広間膜裂孔ヘルニアを認めた。腹部CTで腸間膜濃度の上昇がみられた3例で小腸切除を要した。1例は経過中に発見された胆嚢腫瘍の精査を目的に転科となったが,その他の6例は術後6~32日(中央値:9日目)に退院した。内ヘルニアの診断にはMDCTを用いたMPR画像が有用であり,腸間膜濃度の上昇は嵌入腸管の切除の可能性を示唆する重要な所見である。