日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
十二指腸狭窄で発症した虫垂粘液癌の1例
湊 拓也石川 正志滝沢 宏光一森 敏弘木村 秀阪田 章聖藤井 義幸山下 理子
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2012 年 32 巻 3 号 p. 703-706

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抄録
症例は,71歳女性。嘔吐,腹痛にて当科紹介された。CT検査にて十二指腸狭窄,胆管,膵管拡張がみられたが,膵頭部腫瘤は認めなかった。上部消化管内視鏡で十二指腸狭窄がみられたが,粘膜面は正常であった。腹部血管造影では血管増生を認めなかった。腫瘍マーカーは,CA19-9,DUPAN-2,IL-2Rの上昇を認め,CEAは基準値内であった。PET-CTは,十二指腸と肺門にFDGの集積を認めた。以上より膵癌を疑い手術とした。手術所見は十二指腸を巻き込む腫瘤と腹膜播種があり,生検にて粘液癌と診断した。虫垂に腫瘤を認め,原発性虫垂癌(粘液癌)の腹膜播種による十二指腸狭窄と考えた。虫垂切除術と胃空腸吻合術を行った。術後化学療法としてTS-1内服を行った。原発性虫垂癌はまれな疾患であり,多くは虫垂炎として手術され病理検査で診断される。特異的症状がなく,術前診断に難渋することが多い。腹膜播種による十二指腸狭窄を主訴とした虫垂癌はまれであり,文献的考察を加え報告する。
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© 2012 日本腹部救急医学会
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