抄録
症例は61歳女性。開腹歴なし。心窩部痛を主訴に当院救急外来を受診。腹部単純CTで大網裂孔の存在と同部での内ヘルニアによる小腸イレウスが疑われたが,明らかな絞扼所見は認めなかったため保存的加療で経過観察した。その後腹痛が増強したため,約8時間経過後に腹部造影CTを行ったところ,Closed loopを形成した小腸壁の浮腫性変化が増強しており,腹水の出現も認めた。さらに血液ガス分析ではアシドーシスが認められた。以上より血行障害を伴う絞扼性イレウスと診断し緊急手術を行った。開腹すると,少量の漿液性腹水を認め,treitz靱帯より約130cmの小腸が約80cmにわたって裂孔に陥入し絞扼されていた。嵌頓腸管を整復すると色調は一部改善したが,約50cmの小腸は色調の改善が不良で切除が必要と判断した。術後経過は良好であった。開腹歴のないイレウス例では本疾患を念頭に置く必要がある。その際Multiplanar reformation(MPR)を用いたCT検査が有用であり,本疾患を特定できる可能性がある。