抄録
症例は72歳の男性で開腹手術歴はない。10日間以上続く腹痛と嘔吐で近医を受診し,イレウスの疑いで当院を紹介受診した。造影CTでイレウス像がみられたが,虚血性病変は認めなかったためイレウス管による保存的治療を行った。一時的にイレウスの改善を認めたが6日後に再発し手術を施行した。腹腔鏡下に手術を開始すると横行結腸間膜に約4cmの欠損孔を認め,同部に小腸が陥入していた。ヘルニア門と陥入していた小腸が癒着し,剥離が困難であったため開腹した。癒着を剥離し小腸を整復し,Treitz靭帯から約100cm肛門側の小腸が約10cm陥入していたことが確認できた。陥入していた腸管は狭窄していたため切除し,ヘルニア門は縫合閉鎖した。結腸間膜裂孔ヘルニアは比較的まれであるが,その中でも極めてまれな横行結腸間膜裂孔ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。