抄録
症例は70歳代女性,突然の腹痛と嘔吐にて近医を受診し,急性腹症の診断で同日当院を紹介された。来院時,腹部全体に自発痛と圧痛を認めたが,反跳痛などの腹膜刺激症状は軽度であった。腹部単純撮影で広範囲の小腸の著明な拡張像を認めた。腹部造影CT検査で大量の腹水貯留を認め,広範囲におよぶ小腸壁の造影効果が不良であった。絞扼性イレウスを疑い,緊急手術を施行した。腹腔内には大量の血性腹水があり,広範囲の小腸壊死を認めた。精査すると,Treitz靭帯から180cm肛門側の小腸間膜に18×20cm大の裂孔を認め,その小腸間膜裂孔に160cmの回腸および盲腸が陥入捻転し壊死に陥っていた。小腸間膜裂孔ヘルニアに伴う腸捻転壊死と診断し,壊死小腸を含む回盲部切除術を施行した。小腸間膜裂孔ヘルニアはまれな疾患であり,さらに高齢者の報告例は少ないが,手術時期を逸することなく処置を行う必要がある。