日本腹部救急医学会雑誌
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原著
当院における外傷性膵・十二指腸損傷症例に関する検討
小泉 哲小林 慎二郎根岸 宏行三浦 和裕片山 真史松本 純一平 泰彦大坪 毅人
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2012 年 32 巻 7 号 p. 1151-1156

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抄録
【目的】外傷性膵・十二指腸損傷の治療成績を向上させるために当院では独自の治療アルゴリズムを作成し診療にあたっており,その妥当性を評価する。【方法】Primary surveyの段階において循環動態不安定であれば蘇生のための緊急開腹手術を行う。Secondary surveyの段階で損傷部の評価を行い,受傷機転が鈍的であり,“出血制御”,“感染・炎症の制御”,“臓器機能保持”が非手術的に可能であればNon-operative management(NOM)を選択する。膵損傷の場合は,膵管損傷を伴う場合(IIIb型)において,損傷が限局している(膵管の軸変位がなく膵被膜がおよそ保たれている:IIIb-Localized 〈IIIb-L型〉)か,損傷が限局していない(膵被膜が破綻し,時に膵管の軸変位を伴っている:IIIb-Spread 〈IIIb-S型〉)かをCTと腹部所見で判断し,IIIb-L型であればNOMを,IIIb-S型であれば原則手術を選択する。十二指腸損傷の場合では,管腔構造の破綻がなければNOMを選択している。2005年4月から2010年9月までに当院救命救急センターを受診された外傷患者を対象とした。【結果】外傷患者総数は3,886名,内腹部外傷患者は109名(2.8%),内,膵・十二指腸損傷症例は5名であり,外傷患者全体の0.13%であり,腹部外傷患者の4.6%であった。受傷機転は1例のみ刺創で,他4例はすべて鈍的外傷であった。行われた治療は,ダメージコントロール手術2例,根治的手術1例,NOM2例であった。治療成績は,ダメージコントロール手術が行われた1例のみ術後感染症死された他はすべて軽快退院されていた。【結論】当院における外傷性膵・十二指腸損傷に対する治療戦略アルゴリズムはさらに症例数を増やし検討する必要があるが有用である可能性があると考えられた。
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© 2012 日本腹部救急医学会
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