日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
腸アニサキス症で小腸穿孔をきたした1例
川元 真高川 亮福島 忠男茂垣 雅俊舛井 秀宜
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2013 年 33 巻 6 号 p. 1047-1050

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抄録

要旨:症例は21歳女性。生魚を摂取し,12時間後に下腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部所見上は下腹部に著明な圧痛がみられ,造影CTで有症状部位に一致して限局性の小腸壁の肥厚,腹腔内遊離ガス像,腹水を認め,小腸穿孔の診断で同日緊急手術となった。手術所見では,小腸に2mm大の穿孔部位がみられ,周囲は発赤し浮腫状であり,小腸部分切除を行った。病理組織診断の結果,穿孔部近傍に好中球と好酸球の浸潤を伴う寄生虫像を認め,寄生虫による小腸穿孔と診断した。また,血液検査にて抗アニサキス抗体陽性でありアニサキス症による小腸穿孔と診断した。アニサキス症のうち小腸アニサキスは4~8%程度と報告され,その中でも小腸穿孔の報告は極めて少なく,2012年までの本邦医中誌検索では本症例を含め4例の報告しかない。今回われわれは小腸アニサキス症による小腸穿孔の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する。

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© 2013 日本腹部救急医学会
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