日本腹部救急医学会雑誌
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特集:大腸穿孔の治療方針
大腸穿孔に起因したSIRS症例に対するPMX-DHP療法の治療成績
斎藤 人志松江 俊英中嶋 和仙中村 喜亮林 圭向井 弘圭高島 茂樹
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2013 年 33 巻 6 号 p. 989-996

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抄録

要旨:【目的】大腸穿孔に起因したSIRS症例に対するPMX-DHP療法の有用性と限界についてretrospectiveに検討した。【対象・方法】PMX-DHPを施行した大腸穿孔に起因したSIRS症例64例を対象に,その臨床所見と各種mediatorの経時的推移を救命例と死亡例について検討した。全例に手術が施行され,またCHDFを12例に併施した。【結果】53例(82.8%)が救命可能であり,また本療法の導入後における治療成績は導入前に比し有意に向上した。PMX-DHP施行前のAPACHE-II score,SOFA scoreはいずれも死亡例が救命例に比し有意に高点数であった。発症から手術までの経過時間,およびPMX-DHP開始までの術後経過時間は救命例が死亡例に比し有意に短時間であった。ドパミン投与減量可能症例は救命例が死亡例に比し有意に高率であった。臓器不全と予後の関係では死亡例が全例4臓器以上の障害を合併しており,臓器別では肝,中枢神経障害の合併例が有意に予後不良であった。血中IL-6,IL-10はいずれも救命例が死亡例に比し有意に低値を示し,PMX-DHP施行後の増減率は救命例で有意な減少がみられた。CHDFは12例に併施したが5例(41.7%)のみのが救命可能であった。【結語】SIRS状態を呈する大腸穿孔症例に対する本療法は良い適応であり,可及的早期の開始が肝要と思われた。しかし,4臓器以上の臓器障害合併例,および肝や中枢神経障害の合併例に対する救命は本療法のみでは困難ではないかと考えられる。

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© 2013 日本腹部救急医学会
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