2014 年 34 巻 1 号 p. 109-113
症例は72歳,女性。腹痛を主訴に前医を受診し,腹部造影CTで結腸間膜から後腹膜に存在する血腫内に膵十二指腸動脈の拡張を認めたが,造影剤の血管外漏出はなかった。加療目的に紹介受診となり,緊急血管造影を行いコイルによる塞栓術を施行し,病状は安定した。来院時,発熱と炎症反応の上昇を認め,入院時の血液培養では口腔内常在菌であるStreprococcus-anginosusが検出され,MEPMの投与を早期に開始した。初診時の約3日前よりう歯による左下顎痛,腫脹,熱感を認めていたため,う歯による下顎膿瘍からの全身性感染症による感染性動脈瘤と推測された。その後,血腫による十二指腸の通過障害をきたしたため,絶飲食,経鼻胃管挿入,TPNで保存的に加療したが,通過障害の軽快には長期間を要した。今回,われわれは,う歯による感染性動脈瘤が原因と考えられた膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する。