2014 年 34 巻 1 号 p. 115-119
症例は,84歳の男性。貧血を主訴に来院し,精査にて胸部進行食道癌と診断した。既往歴は,78歳時に脳梗塞,心房細動,2型糖尿病であった。全身状態は比較的良好で手術を強く希望された。胸腔鏡下食道切除,開腹にて胃管作製し胸骨後経路で頸部食道胃管吻合術を施行した。術後第2病日に尿量減少,腎機能低下から持続的血液濾過透析療法を施行し,第3病日も継続して除水した。第4病日に軽度の腹痛を訴えたが,腹部X線検査から腸管運動の減弱と判断した。第5病日に不穏状態となり腹部CT検査を行い門脈ガス血症と腸管囊胞様気腫症を認め,代謝性アシドーシスが増悪したため,緊急開腹となった。術中所見では,回腸末端の口側90cmの小腸が非連続的に壊死していたが,上下腸間膜動脈の拍動は触知でき,壊死部腸管切除術を施行した。病理学的に非閉塞性腸間膜虚血症と診断した。術後は集中治療室にて集学的治療を行ったが,多臓器不全で死亡した。