2014 年 34 巻 1 号 p. 33-36
当院で手術を施行した鼠径部ヘルニア嵌頓症例を検討し,診断と治療法を考察したので報告する。2008年1月から2013年2月までに当院で手術を施行した鼠径部ヘルニア182例のうち嵌頓例は22例(12.1%)であった。外鼠径ヘルニア7例,大腿ヘルニア9例,閉鎖孔ヘルニア6例で,初診時にヘルニア嵌頓と診断された例は18例であった。徒手整復や自然整復された7例は待機手術となり,11例が緊急手術となった。一方,鼠径部への注意不足でヘルニア嵌頓と診断されなかった4例は,原因不明イレウスとしてHBO(Hyperbaric oxygen therapy:高気圧酸素療法)が施行された(待機手術)。術式は待機手術11例と緊急手術7例の18例がKugel法であった。急性腹症患者に遭遇した際,診察医はヘルニア嵌頓も念頭におき,身体的所見やCT画像所見で鼠径部近傍を確認することが肝要であると考えられた。