2014 年 34 巻 1 号 p. 37-41
上腸間膜動脈塞栓症は急速に全身状態を悪化させる予後不良な急性腹症であり,大量腸管切除術を要した場合,短腸症候群を呈しquality of lifeを低下させる。2006年1月から2012年12月までに外科治療を行った上腸間膜動脈塞栓症10例を対象として治療成績について検討を行った。9例は術前のmultidetector raw computed tomography(MDCT)にて上腸間膜動脈塞栓症と診断した。全例で緊急手術を行い,腸管大量切除術が必要となったのは2例,小腸部分切除術を施行したのが1例,7例は塞栓除去術を施行した。原病死例は認めなかった。大量腸切除例1例では短腸症候群を呈し,継続的な経静脈栄養を必要とした。MDCTによる診断技術の向上により,早期発見や精度の高い診断が可能であった。積極的な外科的治療で腸管温存が可能となり,良好な結果を得ることができた。