2015 年 35 巻 6 号 p. 773-776
症例は78歳男性。発熱,食思不振と便秘症状を主訴に当院を受診した。CTにて盲腸から下行結腸にかけて著明な残便貯留による大腸拡張を認めた。保存的加療目的に経過観察入院となった。入院翌日に腹痛と血液検査上で炎症反応の増悪を認め,宿便性イレウスによる閉塞性大腸炎を疑い,緊急手術を施行した。下行結腸に便塊による閉塞と虚血性変化を認めた。術中腸管洗浄を行った後,下行結腸を切除し,用手的に端々吻合を行った。病理組織学的上,粘膜の壊死と結腸壁全層に炎症細胞の浸潤を認め,閉塞性大腸炎と診断した。術後経過良好で術後20日目に退院した。本例のように宿便性イレウスを原因とする閉塞性大腸炎はまれである。腹部症状の増悪や血液検査上で炎症反応の増悪を認めた場合は,宿便性イレウスを原因とする閉塞性大腸炎の続発を疑い,手術を考慮する必要がある。