2016 年 36 巻 1 号 p. 129-132
症例は70歳男性。本態性血小板血症(ET)でアスピリンとhydroxyureaを服用していた。発熱と腹痛を主訴に当院を受診し,腹部CT検査で小腸腸間膜に穿通する線状構造物を認め,病歴聴取から魚骨による小腸穿通が疑われた。来院時の血液検査は血小板65.4万/μLであり,その他凝固能異常は認めなかった。汎発性腹膜炎への移行を考慮し,緊急に魚骨摘出術を施行した。術直後に一過性の出血傾向を認めた。術後5日目にドレーンを抜去したが,7日目に発熱,腹痛およびドレーン痕から腸液漏出を認め,縫合不全に伴う腹膜炎が考えられた。経皮的膿瘍ドレナージを行い保存的に加療したが,縫合不全は遷延し,退院は術後55日目であった。ET患者の手術症例は比較的まれであり,さらに病態的特徴からその周術期管理は難しい。今回,ET患者に発症した魚骨の小腸穿通の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。