日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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症例報告
腸重積および穿孔性腹膜炎を合併した回腸炎症性線維性ポリープの1例
長野 真由子田端 正己加藤 憲治阪本 達也藤村 侑前田 光貴春木 祐司大澤 一郎岩田 真三田 孝行
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2016 年 36 巻 1 号 p. 177-181

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抄録

症例は86歳女性。入院4日前から腹痛の出現と改善を反復した。受診当日に突然,腹部全体に強い痛みが出現し,当院に救急搬送された。腹部は平坦であったが全体に強い圧痛を認め,筋性防御および反跳痛を伴っていた。CTでは肝表面に腹腔内遊離ガスを認め,肝および脾周囲に少量の腹水が貯留していた。また,回腸─回腸型の腸重積と同部に回腸腫瘤を認めた。回腸腫瘤による腸重積および腸管穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した。術中所見では回腸末端から約60cm口側に順行性の腸重積を認め,先進部に弾性軟の腫瘤を触知し,その口側に穿孔を伴っていた。重積腸管と穿孔部を含め約60cm回腸を切除した。切除標本で重積先進部に最大径約65mmの弾性軟の有茎性粘膜下腫瘍を認め,病理組織学的には炎症性線維性ポリープと診断された。頻度は少ないが,成人腸重積や穿孔の原因として本症の存在を念頭におくことが重要である。

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© 2014, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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