2016 年 36 巻 3 号 p. 613-615
症例は70歳代,男性。当院で上行結腸腺腫に対し,内視鏡的切除術を施行し,止血のためにクリップを使用した。1年10ヵ月後に右下腹部痛,発熱を主訴に当院を受診した。CT画像で虫垂腫大と虫垂内腔にクリップを認め,急性虫垂炎の診断で入院した。抗生剤による保存的加療を施行したが,症状が再燃し,入院後5日目に緊急手術となった。手術所見では,回盲部全体が腹壁や後腹膜と癒着し,膿瘍を形成していた。虫垂は腫大し,クリップが嵌頓していた虫垂中央部の炎症が特に強かった。虫垂切除術および洗浄ドレナージ術を施行した。脱落した内視鏡用クリップによる有害事象は極めてまれであるが,本症例のように虫垂に迷入・嵌頓し,急性虫垂炎を起こすことがあり,注意が必要である。