2016 年 36 巻 3 号 p. 681-685
要旨:症例は63歳,男性。糖尿病性腎症で6年前から血液透析を受けていた。透析中に発熱と腹痛が出現し,CTで胆石と腹水を認め,胆囊結石による急性胆囊炎の診断で当院に救急搬送された。到着時ショック状態となり,壊疽性胆囊炎による敗血症性ショックと診断し,緊急手術を施行した。腹腔鏡所見で胆囊底部からの噴出性出血による腹腔内大量血液貯留を認め,出血性ショックと診断し,開腹手術に移行して胆囊を摘出した。しかし胆囊摘出後も肝床部からの出血を認め,凝固機能異常のため止血困難となった。タオルパッキングで手術を終了し,ICUで全身管理を行った。術後7日目に凝固機能異常が改善したため再手術を行い,タオルを摘出した。腹腔内大量出血を伴う出血性胆囊炎による出血性ショックはまれではあるが,致死的状態に陥りやすく注意を要する。本症例は二期的手術によって救命し得た。