2016 年 36 巻 7 号 p. 1173-1176
当院を受診しシートベルトによる腸管穿孔と診断された14例について検討を行った。 男性11例,女性3例で,平均年齢は49歳。四輪車運転手が13例で助手席乗員が1例であった。全例受傷時シートベルトを着用しており,うち10例にシートベルト痕を認めた。病着時ショックになっていたものは5例で,すべて腸間膜損傷合併による腹腔内出血が原因であった。CT撮影は13例で行われ,うち2例でfree airを認めなかった。治療は全例に開腹手術が行われた。単発の腸管穿孔は5例,残り9例は多発損傷(うち4例は多発穿孔)であった。転帰では1例死亡例があった。シートベルト痕と腸管穿孔に強い関連が示唆された。Free airがすぐ出現しない症例や,時間が経ってから症状が出現する症例もあり,診断にあたっては慎重な判断,対応が必要である。また,腸管損傷は多発する傾向にあり,手術の際は見落としのないよう注意すべきである。