2017 年 37 巻 4 号 p. 631-635
症例は55歳の男性。夜にサバの刺身を生食した。その3日後に腹痛,嘔吐・下痢を主訴に当科へ受診した。腹部所見では,臍周囲の圧痛と腹部膨満を認めたが腹膜刺激症状は顕著ではなかった。血液検査で白血球増多と炎症所見の上昇,腹部単純X線で腸閉塞像を認めた。腹部造影CTでは,造影効果を伴う限局性・全周性の小腸壁の肥厚と内腔の狭小化および口側小腸の拡張,さらに腹水の貯留を認めた。小腸アニサキス症早期診断基準により同症による腸閉塞と診断し,入院後ただちに高気圧酸素治療を施行した。入院翌日には自他覚症状は軽快し,腹部単純X線でも腸閉塞像は改善した。アニサキス特異IgE抗体は40.80UA/mL(基準値0.34以下)と高値を示した。小腸アニサキス症は比較的まれな疾患であるが,小腸壊死・穿孔,腸重積や腸閉塞をきたすことがあり注意を要する。今回,本症による腸閉塞に対し高気圧酸素治療を施行し奏効した興味深い1例を経験したので報告する。