2017 年 37 巻 4 号 p. 651-656
症例は75歳の女性で,吐血を主訴に近医へ救急搬送された。上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に出血を伴う潰瘍性病変を認めた。CT上は膵頭部から十二指腸へ連続する腫瘍が認められ,膵頭部癌の十二指腸への浸潤と考えられた。当院へ緊急入院後に,大量吐血による出血性ショックを呈したが,輸液・輸血による治療を行い全身状態が改善した後,膵頭十二指腸切除術を施行した。腫瘍は病理組織学的に十二指腸浸潤を伴う低分化腺癌の診断であった。膵癌は乏血性の腫瘤であり,十二指腸浸潤からの消化管出血で出血性ショックへ至った報告はまれであるため,文献的考察を加え報告する。