2017 年 37 巻 4 号 p. 661-665
腹部救急疾患と同時に,虚血性心疾患を発症している症例にときには遭遇する。このような症例の場合,治療の優先順位に苦慮し,その中で適切な治療方針を立てる必要に迫られる。今回,われわれは不安定狭心症に急性胆囊炎を併発し,治療方針に苦慮した1例を経験したので報告する。症例は79歳男性。安静時胸痛を主訴に来院。精査で,不安定狭心症と急性胆囊炎の併発の診断となる。狭心症の治療を優先するため専門機関転院としたが,諸検査の結果から緊急カテーテル検査は適応外と判断され,急性胆囊炎の治療のため当院再転院となった。来院後の腹部CT検査では胆囊内および胆道に気腫を認め,気腫性胆囊炎の診断となる。緊急手術の方針とし,開腹胆囊摘出術を施行。術後は集中治療室で各科連携した全身管理を開始し,経過良好で軽快退院された。