2017 年 37 巻 4 号 p. 681-685
症例は64歳男性,食後からの心窩部痛を主訴に当院を救急受診した。腹部CTで十二指腸水平脚に石灰化を伴う線状陰影を認め,形状と食事摂取歴から魚骨による十二指腸穿通と診断した。管腔に対し垂直方向に穿通しており,穿通部位は上腸間膜静脈(Superior Mesenteric Vein:以下,SMV)より右側で膵頭部に近接していた。腹腔鏡下手術を施行し魚骨を摘出した。回結腸動静脈より頭側,SMVより右側の腸間膜を切開して腸間膜を頭側へ剝離し十二指腸前面に至った。水平脚の前壁に魚骨が穿孔しており鉗子で把持して摘出した。穿孔部は単純縫合閉鎖した。膿瘍や血腫形成は認めなかった。術後経過良好で術後5日目に退院となった。十二指腸魚骨穿通はまれな疾患であり,腹腔鏡での十二指腸異物摘出はこれまで報告がないが,腹腔鏡下の右側結腸手術と同様の操作で施行可能であり,安全かつ有用な治療方法と考えられた。