2018 年 38 巻 6 号 p. 1071-1074
症例は虫垂炎に対して保存的治療歴のある85歳男性。腹痛を自覚し前医受診。開腹歴はないが,腹部CTで絞扼性イレウスの診断に至り当院に紹介され緊急手術の方針となった。開腹し腹腔内を観察すると,虫垂先端部が小腸間膜と癒着し,それにより形成された間隙に小腸が嵌頓している状態であった。同部腸管壁の色調変化を認めたため癒着部を剝離し絞扼を解除した。小腸の色調変化は絞扼解除によって改善したため腸切除は施行せず,絞扼帯の原因となった虫垂の切除を行い手術終了とした。急性虫垂炎における麻痺性イレウスや術後癒着性イレウスの報告は多いが,虫垂炎に関連した内ヘルニアによる絞扼性イレウスの報告はまれであるため,文献的考察を加え報告する。