2019 年 39 巻 6 号 p. 1131-1135
症例は73歳女性。局所進行膵頭部癌で術前治療を予定されていた。突然の吐下血を認め,外来受診となった。来院時ショック状態を呈しており,血液検査所見で高度貧血を認めた。腹部造影CT検査で胃十二指腸動脈からの造影剤の漏出を認め,緊急塞栓術を行った。経過中無脈性心室頻拍を呈したため,1サイクルの心肺蘇生を行った。翌日抜管後の胸部X線検査で右横隔膜下に遊離ガス像を認め,腹部造影CT検査で多量の腹腔内遊離ガス像と腹腔内液体貯留を認め,胃壁途絶所見も認めたため,胃穿孔と診断,同日緊急開腹術を施行した。胃小弯に約7cmの裂創を認めたが,粘膜面に虚血性変化や潰瘍の所見はなく心肺蘇生に起因する胃破裂と診断し,破裂部を縫合閉鎖した。心肺蘇生後の胃破裂は0.1%とまれで不適切な人工呼吸による胃拡張が強く関与しているとされる。自験例のように消化管出血により著明な胃内容貯留がある場合もリスクになることを念頭に置き,迅速なスクリーニング検査を行うことが重要である。