2019 年 39 巻 7 号 p. 1195-1198
症例は77歳女性。54歳時に子宮頸癌に対して子宮全摘術と術後放射線療法の既往がある。2日前から発熱と腹痛,意識レベルの低下を認め救急搬送となった。来院時,39.0℃の発熱と腹部全体の腹膜刺激徴候を認め,腹部単純CT検査では大量の腹水と少量のfree airを認めた。消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹手術の方針とした。腹腔内には大量の膿性腹水が存在したが,消化管には穿孔部位を認めなかった。膀胱頂部に直径3mmの穿孔部を認め,膀胱自然破裂と診断し穿孔部を単純閉鎖した後,大網を被覆し手術を終了した。術後は再発予防目的に膀胱内バルーンカテーテルを留置し退院した。適切な治療や管理が行われるために,骨盤内への放射線治療歴がある腹痛症例ではたとえ長期間が経過していても膀胱自然破裂を鑑別に入れた治療前検索が必要であるとともに,発症後の再発予防や発症を未然に防ぐための慎重な排尿症状の観察も重要であると考えられた。