日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
保存的治療を選択した裁縫針異食による腹腔内異物の1例
橋本 昌幸
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2019 年 39 巻 7 号 p. 1205-1208

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抄録

精神発達遅滞のある47歳女性が,1週間前に裁縫針を飲み込んだと訴えた。これまでに針の異食による4回の開腹歴があった。近医で撮影した腹部単純X線で異物が確認され当科紹介となった。自覚症状はなく,腹膜刺激症状もなかった。腹部CT検査では計16本の針が確認され,一部管腔外へ脱出していたが,腹腔内遊離ガス像や腹水はなかった。手術治療の同意が得られず,自然排泄を期待し経過観察のため入院とした。第17病日に精神科入院施設へ転院するまで,自覚的・他覚的異常所見を認めなかった。転院後,当科外来に2年間無症状で通院している。腹部単純X線で確認できる針の数は減少し,管腔外へ遊走した針は固定されたままである。鋭利な異物の誤飲は,自然排泄されるまでに長期間を要することがある。異物が感染しにくい無機物で,無症状で固定されている場合は保存的加療も可能であると考えられた。

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© 2019, Japanese Society for Abdominal Emargency Medicine
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