2019 年 39 巻 7 号 p. 1217-1220
症例は51歳女性。1週間持続する嘔吐・下痢と脱力で救急搬送となった。敗血症性ショック状態で,腹部単純CT検査では腸管浮腫と大量の腹水を認め,腸管壊死を疑い緊急手術を施行した。開腹すると2,000mLに及ぶ乳白色調の膿性腹水を認めた。腹腔内をすべて観察したが,腸管壊死や腸管穿孔などの所見を認めず,腹腔洗浄ドレナージ術のみを施行し手術を終了した。帯下培養,血液培養,腹水培養からStreptococcus pyogenes(Group A)が検出された。透析治療などを含めた急性期治療で感染コントロールができているにもかかわらず,筋力低下や末梢神経障害を認め,敗血症によるcritical illness polyneuropathy(CIP)と診断した。今回,劇症型A群溶連菌による骨盤腹膜炎で多彩な症状を呈したが,手術・急性期治療・リハビリテーションで救命し得た1例を経験したため若干の文献的考察を加え報告する。