2019 年 39 巻 7 号 p. 1227-1229
症例は50代の女性。近医で盲腸腫瘍に対して内視鏡的切除術を受けた4日後に右下腹部痛を主訴に受診された。腹部CTでは虫垂内に内視鏡クリップを認め,それとは別に盲腸腫瘍切除部に炎症所見を認めた。腹痛の原因および治療方針の判断に悩んだが,抗生剤投与を選択し,翌日には症状が軽快した。切除した盲腸腫瘍の病理診断結果が腺腫であったことを確認した後,クリップは比較的鋭利で後に穿孔をきたすリスクがあると考えて第3病日に単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術中所見では盲腸腺腫切除部の発赤と腫脹および大網の癒着を認め,同部の炎症が腹痛の原因と考えられた。虫垂にはクリップが遺残していたが,炎症所見を認めなかった。虫垂への内視鏡クリップの迷入はまれで,虫垂炎を伴っていない状況で発見された報告はなく,本症例では近傍の炎症による腹痛も合併しており対応に悩んだ症例を経験したのでこれを報告する。