2019 年 39 巻 7 号 p. 1231-1234
症例は48歳の男性で,右鼠径部膨隆と疼痛を主訴に当院救急外来へ転送された。右鼠径ヘルニア嵌頓と診断し徒手整復で還納した。疼痛は改善したが,腹部CTで小腸の浮腫と少量の腹水を認め,経過観察目的で入院した。第3病日に行った経過観察目的の腹部CTで小腸浮腫の増悪と腹水の増加を認めたので腹膜炎を疑い審査腹腔鏡を行った。回腸腸間膜対側に漿膜損傷を認め,ヘルニア嵌頓整復によるものと判断し腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した。腹腔内の汚染は軽度であったため,前方アプローチで根治術を行い経過は良好で,術後第10病日に退院した。鼠径ヘルニア嵌頓の徒手整復は腸管損傷を起こす可能性があることを念頭に置くべきと考え報告する。