2019 年 39 巻 7 号 p. 1313-1316
小児固形がんには腹腔内出血によりOncologic emergencyをきたす症例が存在する。今回,腫瘍破裂による腹腔内出血でショックをきたしたが,IVRによる止血後に待機的肝切除を施行し得た肝芽腫混在成人型肝癌の1例を経験したので報告する。症例は10歳男児で,突然の腹痛と嘔吐を主訴に前医を受診した。CT検査で8cm大の肝腫瘍と腹腔内に液貯留を認め,後にショックバイタルを呈したことから,腫瘍破裂による腹腔内出血の診断で当科紹介となった。緊急IVRで止血し,全身状態の改善を待って入院7日目に肝切除術を施行した。病理所見から肝芽腫混在成人型肝癌の診断となり,小児科で化学療法による治療を継続している。ショックバイタルを伴う腫瘍破裂による腹腔内出血は,迅速な判断による治療介入が必要だが,年齢や病態に応じて手術やIVRなど,適切な治療を選択しなければならない。